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残留農薬(グリホサート)に関するパンの安全性について

※日本パン工業会定例会(2021年3月開催)での決議を経て、当会からの依頼により、日本パン技術研究所に作成していただいた見解を掲載いたします。

一般社団法人 日本パン技術研究所

 一般社団法人日本パン技術研究所は、昭和24年に設立され、製パン技術の職業教育、パン類の加工技術及び品質・栄養に関する研究調査、食品安全衛生の指導・監査等の事業を行い、製パン技術者の職業能力の開発及び向上の促進、パン類を中心とする食品科学技術の振興、食の安全・安心の増進等を図り、もって国民生活の安定向上及び食品産業の健全な発展に寄与することを目的とする機関です。(所長:井上好文(農学博士)

 食品が安全であることは妥協が許されない絶対条件ですので、食品の品質改善に使用される食品添加物や農業生産における病害虫や雑草などの防除に使用された残留農薬に関しては、厚生労働省が内閣府食品安全委員会のリスク評価に基づいてリスク管理を徹底しています。また、輸入小麦は、輸入時に農林水産省が船ごとに検査を実施し、食品衛生法の基準に適合した小麦のみを買い入れています。
 このような中で、世界中で幅広く使用されているラウンドアップという除草剤の成分であるグリホサートを不安視する風評が週刊誌やYou Tube等で取り上げられ、一部の消費者に混乱が生じています。しかし、風評の発端となった国際がん研究機関(IARC)の発表による、グリホサートは「おそらく発がん性がある(グループ2A)」との評価に対しては、これまで提出されたグリホサートの安全性試験データや関連文献が見直された結果、科学的な根拠に疑問のあることが国際残留農薬専門家会議(FAO/WHO-JMPR)、欧州化学機関(ECHA)、そして日本を含む先進諸国の規制当局の見解で明らかにされています。その見解は「グリホサートには発がん性や遺伝毒性は認められず、ラベル表示された適用方法で使用する限りは安全である」という内容のものです。このグリホサートとパンの関係について、パンに関する第三者機関として、以下の見解を述べます。

 ラウンドアップは世界各国で小麦を含めた農産物に広く使用されており、パンにも極微量のグリホサートが検出されます(週刊誌やYou Tube等で取り上げられている数値はパン1kg当たり0.05mg〜0.18mg)。これに対して、グリホサートの内閣府食品安全委員会が定めたADI(一日摂取許容量:人がある物質を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量)は体重1kg当たり1mgです。これは、例えば体重50kgの人が50mgのグリホサートを毎日、一生涯、摂取し続けても、健康に問題がないことを示しており、取り上げられているグリホサートの最大検出量0.18mg/kgのパンであっても、毎日278kg(約730斤)食べ続けても問題がないことになります。このパン量は日本人1人当たりの1日の平均的パンの摂食量である44gの約6,000倍にもなる非現実的な量です。このことから明らかなように、パンに関するグリホサートの健康上の懸念は全く不要です。
 最初に記したように、食品の安全性は科学的なリスク分析によって確保されています。風評に惑わされずに食生活を楽しむことが大切であると思います。

以下のURLに東京大学名誉教授の唐木英明氏がまとめられた見解がありますのでご参照ください。

*ラウンドアップの安全性について:よくあるご質問(FAQ)
https://agrifact.jp/faq-roundup-safety/